□干し柿
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 そう、ギンにとってこの時期一番のやっかい者はやちるなのだ。
 丹精込めて此処まで食べられるように作って来た物が、一瞬にして消えてしまうのだ。
 実際ギンは大量に作り、毎年他の隊へもお裾分けしている程だ。
 だが、やちるに取られてしまうと分け前が減る所ではない、文字通り食い尽くされてしまうのだ。
 夜はやちるも眠る為、念の為の寝ずの番にイヅルを置くが、やちるの一番の活動時間は剣八が昼寝する、昼食後なのだ。
 この時間は、さすがにギンがここの番をする。
 十一番隊副隊長の肩書きは伊達ではない。
 ギンでなくては、干し柿は死守できないのだ。

 女性死神協会で遊んでいるときは、乱菊がやちるを引き留めようと心配りをしてくれるのだが、今日はその協会の活動がないと乱菊から知らされている。
 そのため、朝から見張っていたのだ。

「出来上がったら分けたる、ゆうてるやろ?」
「いや。減っちゃうもん」
「そらそうや。ボクかて食べたいから作ってるんやから」
「ぶー」
 会話をしながらやちるが隙を伺うが、何時もは手加減してくれ負けてくれても、この時だけは手加減がなく踏み出せない。

 にこやかな会話だけする時間が過ぎていく。


「やちるー!」
「あ、らんらん」
「金平糖、いらないの?」
「いるー!!」
 乱菊の誘導にやちるがあっさりと引っかかる。

「乱菊」
「何?」
「ありがとさん」
「どういたしまして」
 二人はにっこりと笑いあい、乱菊はやちるを連れ出した。


 こうして、干し柿は死守され、無事に二人の手元に残ったのでした。

「んまーい」
「んんー、今年の出来はええね」
「うん」
 ギンと乱菊は縁側で、お茶を啜りながら勝利の味を噛みしめたのでした。


おしまい
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