◇BLEACH

□はじまり
3ページ/10ページ

「浮竹隊長、虎徹さん、結構です、無理矢理連れていった所で、また逃げられるだけですから」
 
 溜め息と共に静かに七緒が止めた。

「伊勢…」
「浮竹隊長、あの…、副隊長の移動願いと言うものは、出しても良いものなのでしょうか」
「待て、伊勢」
「七緒ちゃん…」
「伊勢さん…」
「この二年、隊長のお心に添うようにと、思ってきましたが、隊長が私の顔も見たくない程に逃げられるのではどうしようもありません」
「おい、京楽!」
「七緒ちゃん…、ごめんよ。そんなに苦しめていたなんて…」
 力なくうなだれ、廊下に座ったままの七緒に、春水は静かに歩み寄り膝をつく。
「ボクの我儘で、君を苦しめていたなんて」
「隊長…」
 顔を上げた七緒の瞳には、うっすらと涙が滲んでいた。
「七緒ちゃん…」
 春水は七緒の頬に手を添えると、顔を近付ける。
「たい……!?」
「やった」
「わあ!キスしちゃてる!」
「んん!んー!」
 七緒はキスをされている事を自覚すると、春水の胸を叩き逃れようとする。
 しかし、春水はやっと触れる事のできた七緒を離そうとせず、それどころか舌を絡ませ、七緒をしっかり味わうように深く入っていく。
「わぁ…、こんな長いキスシーン始めてみました」
 普段騒々しく元気でも、清音も女の子である。頬を赤らめて見入ってしまっている。
「京楽、お楽しみの所悪いが、続きは余所でやってくれ」
「野暮だねぇ…どうも…」
 ようやく唇を離し、口元をさり気なく拭うと、腰砕けてしまった七緒を抱き上げる。
「じゃ、お邪魔しました」
 
 そのまま、姿を消してしまう。思いを一刻も早く伝えたくて。

「わあ!伊勢さん姫抱きしたまま、瞬歩なんてすごい!」
「伊勢が目を回さなきゃ、いいんだが」
 十四郎が苦笑いをする。
「清音、悪いが薬湯をもう一杯頼む」
「はいっ!」
 清音も深く追求などしない。春水の事だから、うまく行っても、駄目だとしても必ず十四郎に報告に来るだろうから、嫌でも知るところになるからだ。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ