◇BLEACH

□存在
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「隊長が側にいますよ。一角とボクは、お二人いない代わりに行かなくちゃ」
弓親はやちるの布団を掛け直しそっと出ていった。
「寝てろ」
「…うん…」
 薬が利き始めたのか、やちるは静かな寝息をたて始め、剣八はやることもないので、窓際の壁に寄り掛かり、弓親の持ってきた書類に目を通し始める。



「うう…」
「やちる?」
 目を覚ましたかと、書類から目を離して見ると、寝返りを打った所だった。熱くなったのか、布団を蹴飛ばしている。
 溜め息を吐き、布団を掛け直そうとして、やちるの汗に気が付いた。弓親が言っていたのはこれか、と解る程、やちるは汗をかいていた。
 剣八は言われた事を思い出し、手拭いでやちるの顔と首の汗を拭き取る。
「ん…剣ちゃ…?」
「起きたか、丁度いい着替えろ」
「うん…」
 まだ熱と薬でふらふらしながらも、寝巻を脱ぎ、剣八に汗を拭ってもらい、乾いた寝巻に着替える。
「さ、もう一眠りしろ」
「…うん…」
 やちるは素直にこくりと頷くと、あぐらをかいている剣八の膝の中にすっぽりと収まり、そのまま剣八の膝枕で眠ってしまった。
 布団に戻そうとするが、やちるは剣八の袴をしっかり握って離さない。何せ、高速で走る剣八の背から落ちない握力の持ち主である。病人ゆえに無理もできない。
「しょうがねぇな…」
 掛け布団を手繰り寄せ、やちるに掛け、再び書類に目を通し始めた。




「具合はどうッスか?」
 夕方、一角がお見舞いに訪れると、布団がひかれているものの空っぽだった。部屋をぐるりと見渡せば、やちるは剣八の膝の中に。
 そっと近寄り、小声で尋ねる。
「どうっすか」
「ああ、落ち着いた見てえだな。熱は下がった」
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