◇BLEACH

□存在
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「そりゃよかった。これ、お見舞いです」
 そう言って籠を渡す。籠の中には様々な珍しい果物が入っていた。
 もう片手には、二人の夕飯を携えていた。それを置き、剣八の膝の中で幸せそうに眠るやちるを見て、一角はぽつりと呟く。
「…寝てりゃ、可愛いんスけどね」
「あ?」
 剣八の思いがけず鋭い視線に、慌てて言い足す。
「あ、いや、起きてる時も可愛いっスけど、こう変なあだ名ばっかで呼ばれるんで…、あ、その、失礼しましたっ!お大事に〜」
 言い訳する程、剣八の視線に殺気が籠もって行く。一角は慌てて逃げ出した。剣八が身動き出来ぬ事で命拾いしたのだった。



「君、失言多すぎ」
「つーか、副隊長寝てるだけで、あんな独占欲丸出しになるなんて解らんつーの!」
「まあね、副隊長が起きてたら聞き流す台詞ではあるね」
「だろっ!?しかも、隊長無自覚だし」
「本当にね…」
 二人は部屋を見やり、静かにその場を離れた。


「ん…」
「やちる。飯があるが食うか?」
「ん、食べる…」
 むくりと起き上がり、目をこすりながら、剣八の膝から這い出し、置かれた夕飯と果物を見つける。
「わ、何これ」
「一角が持ってきた。見舞いだとよ」
「ふーん。食べていい?」
「先に飯を食え」
 それぞれの膳を引き寄せて夕飯を済ませる。熱が下がり、喉の痛みが収まったのか、やちるの食欲は旺盛で、一角の持ってきた果物も平らげてしまう。
 汗でべとつく体を洗いたいとのやちるの希望で、剣八付き添いで風呂に入り、部屋に戻ってくると、剣八の布団だけが敷かれていた。


「あれ?あたしのお布団は?」
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