◇BLEACH

□存在
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「おめぇのは汗で濡れてたからな。今日は一緒だ」
 剣八が先に布団に横たわり、布団を上げる。
「わーいっ!」
 素早く潜り込むと、剣八の腕を枕にする。
「久しぶりだねっ!」
「ああ」
「あたし、もっとかぜひいてていいな」
「ああ?」
「だって、剣ちゃんすっごく優しくて、ずっと側にいてくれるんだもん」
「……とっとと寝ろ」
 やちるの言葉に剣八は、やちるの頭を押さえて、布団に押し込む。
「はーい、おやすみなさい」
 やちるは最初から剣八の返事を期待していなかったのか、素直に目蓋を閉じた。


 柄にもなく、やちるの側に居たのは、苦しむ彼女が目を覚ました時に、泣きそうに思えたからだ。弓親の袖を引いた時のやちるの表情に驚いた。やちるの泣き顔など、想像できないのだが、それ以上に見たくないと強烈に感じたから。


「…たく、早く治れよ…。俺まで調子が狂っちまう」



 翌日。
「おっはよー!」
 全快したやちるの姿があった。

「早っ、副隊長もう治ったんですか」
「うん!熱もないしノドも痛くないよ!」
「良かったですね」
「あ、弓っち昨日はありがとう!」
「どういたしまして」
「つるりんもありがと!色んな味あって、おいしかったよ」
「…全部食ったんですか」
 いつもなら怒るあだ名に苦笑いで返しつつ、あきれた表情になる。
「だってお腹すいたんだもん」
「やちる」
「なーに、剣ちゃん!」
「見回り行くぞ」
 昨日一日部屋に籠もりっぱなしで、外を出歩きたい気分だ。
「うん!」
 やちるは元気良く返事をしると、剣八の背中に飛び乗る。その微かな重みに、剣八は自然と口元がゆるむ。
「行ってくる」
「いってきまーす!」
「「いってらっしゃい」」


「やっぱり、ああじゃないとね」
「全くだ」
 十一番隊の隊長と副隊長は、二人揃う姿が似合いだと、三席と五席は後ろ姿を見送った。




おしまい
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