□桜と月と猫
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「桜と月と黒猫の夜一サン。絵になりますねぇ…満月でないのが残念なくらいで…」
 喜助は櫓の屋根に座り、桜を眺める。夜一も屋根の端に座り桜を眺めていた。
「…喜助?」
「……夜一サン、人に戻ってくれませんか?」
「…ま、良いじゃろう」
 夜一が変化を解くと、喜助がずいと風呂敷包みを差し出した。
「何じゃ?」
「着物っスよ」
 喜助は夜一に、春らしい明るい色合いの小袖を用意してきていた。
「……喜助」
「何でしょう?」
 夜一は風呂敷を解き、小袖を羽織ると、にやりと口端を上げた。
「このまま、ちゃんと着て桜見物で終るか、このまま、いちゃつくか。どちらがいいかの?」
「……そんなに、着物着たくないんスか?」
「着物は苦しいから、嫌じゃ」
 腕を組み、ぷいとそっぽを向く。
「…じゃ、このままいちゃつく方で良いっス」
 小袖を羽織っただけの夜一の腰を引き寄せ、喜助は唇を重ねる。
「えーっと…」
 夜半といえ、まだ人の気配がするため、喜助は登っていた櫓の中へと潜りこんだ。
 夜一が羽織っていた小袖を、惜しげも無く床へと敷き、その上へ自分が座り、夜一を己の膝の上へと乗せる。
 唇を重ね合わせ、貪るように舌を絡ませ合う。夜一は口付けを交わしながら、喜助の帽子を取り、羽織を脱がせ、作務衣を脱がせていく。
「ん…ちゅ…」
 喜助は夜一のなめらかな浅黒い肌へと手を這わせ、豊かな膨らみを口に含ませ、もう片手を秘密の花園へと潜らせ、探って行く。
「…ふ…ん…」
 喜助の指の動きに、夜一はしなやかな身体を、軽く反らせる。
「……夜一サン…」
「ん?何じゃ?喜助…」
「…早いっスけど…良いっスか?」
「…何じゃ?今日は随分堪えなのじゃな」
「…桜の所為っスかね…ちょっと…」
 微笑を浮かべ夜一を見上げる喜助に、夜一は微笑を返し、額へと口付けを落とす。
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