□桜と月と猫
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「好きにせえ」
 喜助は夜一の腰を取り、ゆっくりと己の身の上へと沈ませる。
「…んん…」
 ゆるりと潜り込む熱と質量に、夜一は微かに声を上げる。
「夜一サン…」
 喜助は座ったまま、夜一を激しく突き上げる。
「ん…喜助…ふ…ん…」
 夜一は喜助の激しさに、肩へしがみ付き、吐息を漏らす。
「すいません…」
 夜一の顔を取り唇を吸い、苦笑いを浮かべ、更に激しく突き上げて行った。



「今日はどうしたのじゃ?」
 事が済み、薄暗い櫓の中で、喜助の上に座り凭れながら見上げ、尋ねる。
「……桜の所為っスよ…」
「ほう?桜の所為だけなのか?」
 夜一は追及の手を緩める気はないらしい。納得の得られる答えがくるまで、のんびりと問い詰める。
「……だって、夜一さん、たまにしか帰って来ないじゃないっスか…アタシがどれだけ淋しい思いをしたか…」
 喜助は観念して、本音を漏らした。
「だから、好きに抱かせてやったじゃろう?」
 喜助は拗ねていたのだ。素直に心情を吐露した喜助に、夜一は笑みを浮かべ喜助の頭を撫で、頬に口付けを落とす。
「フフ、可愛い奴じゃの」
「可愛いって言わないで下さい…」
 淋しかったと夜一に白状させられ、喜助は益々拗ね、夜一は楽しそうに喜助をからかう。


「さて、家に戻ってゆっくりせぬか?」
「はい」


 何処までも、この人には適わない。
 立ち上がった夜一を、喜助は眩しそうに見上げ、腰を上げた。


 そして、浦原商店に戻り、夜が明けるまで、二人は重なりあっていたのでした。



終。
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