□花簪と花言葉
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「うう〜ん。山吹かぁ…」
 花屋の店先で春水は唸っていた。
 黄色の小さな花を付ける山吹の花束を睨み付ける。
「ちょっと黄色って、イメージじゃないんだよな…」
 そしてふと視線をずらした所へ、大振りの赤い花が目に入った。
「あ、ツツジかっ!もう咲いてるんだ」
 店先には早咲きの躑躅が置かれていたのだ。春水は一束買い求めると、いそいそと八番隊へと戻ってきた。



「あれ?七緒ちゃん何処行くの?」
 丁度七緒が本を小脇に抱え、執務室を出るところであった。
「あら、京楽隊長お珍しい、もうお戻りですか」
「ボクを探しに行こうとしてたの?」
「いいえ。女性死神協会の定例議会です」
「あ…そ…」
 春水はがくりと肩を落とす。協会の事では邪魔ができない。渋々道を譲りかけてふと思いついた。
「…はい、これ」
 躑躅の枝を折り、髪へ挿す。
「ちょ…」
「折角だから着けていってよ。似合うよ」
「嫌ですよ、皆さんに何を言われるか…」
「良いじゃない。後で皆に感想を聞きにいくよ」
「恥ずかしいっ、止めて下さい!」
「まあまあ、時間いいの?」
「ああ!もうこんな時間!」
 春水の言葉に煙に巻かれ、七緒は慌てて会議へと向った。髪には躑躅の花を挿したままで。


「申し訳ありません、遅くなりました」
 七緒が会議室へ飛び込むと、協会員は既に席につき待っていた。
「珍しいな、伊勢が遅れるのは」
 砕蜂が口端を上げからかう。
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