□誕生日プレゼント
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「開けて見せてよ」
「……はい」
 乱菊の促しに七緒は苦笑いを浮かべ頷いた。自分一人で開けるよりは気が楽であるし、困るような品であれば、フォローもしてくれるだろう。
 丁寧に包みを開けていくと、これからの季節にぴったりの縮の着物だった。白地に裾に上品に咲いている水蓮の花は、手描きと思いきや、絣であった。
「…これは高価だわ…」
「…ですよね…」
 手の掛かっているであろう意匠に、乱菊と七緒は顔を見合わせ、着物を見つめる。
「でも、あんたに似合いそう。上品だわ…ん?これ何…?」
「…宝石?」
 乱菊が着物以外の小箱に気がつき七緒へと手渡す。七緒がそっと蓋を開けると、紅い石が収まっていた。
「…京楽隊長〜、気持ちは解りますけど…」
「大手を振ってプレゼントできる日なんだよ。見逃してほしいな…」
 乱菊が春水へと冗談粧して苦言すると、春水は苦笑いを浮かべて返す。
「ちょっとお気に入りの部下へ贈る代物じゃありませんよ?宝石は」
「だから、着物も贈ってるじゃないの」
「着物も大概意味深すぎますけどね?」
「…そうだけどさ。まぁ着物くらいは勘弁してよ。君達から貰ったとでも言い訳聞くでしょ?」
「…だからと言って宝石は」
「隠していられるように考えたんだけど、ダメかな?」
 肩を竦め、苦笑いを張り付けたまま女性二人へ問う。
「…ペンダントか、チェーン長めだしね。確かに隠れそう」
 乱菊は箱に収められていたペンダントを取出し、七緒の首に付ける。
「乱菊さんっ」
「まあまあ、いいじゃないの」
 本来なら春水が着ける所であろうが、ここは執務室で何時部下が来るか解らない。それに、乱菊が付けることにより、七緒が否応無しに受け取ることになる。宝石が七緒の胸元で、紅く光る。その姿が見られただけでも、春水には幸せな事だった。
「あら、綺麗じゃない」
 乱菊が誉めると、七緒は頬を染め俯き、宝石を見つめた。
「…この石は…」
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