□特別な
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 少なくとも、女は気配でそう感じた。振り返ると春水の姿はなく、戸が閉められていたから。




「七緒ちゃんっ!」
 七緒が部屋へ入ろうと戸を開けた所、あっという間に、寝台へと押し倒されていた。
「…んん…」
 七緒も予期していたのだろう、春水の背に手を回し口付けを受け入れた。

 春水は戸を閉めると同時に、瞬歩で七緒の部屋まで移動し、部屋に一緒に入り素早く戸を閉め、寝台へと押し倒したのだった。

「…お早いお着きですね」
「酷いよ…、七緒ちゃん。置いていくなんて」
「他にどんな方法がありましたか?」
「…そりゃそうだけどさ…」
 包みを渡し、談笑している時に彼女の霊圧を感じた。七緒はとっさに暇の挨拶を口にし立ち上がったのだ。それは実に適切な判断であった。
「さっそく、誕生日プレゼントが役に立ちました」
「ああああ…目的が違う…」
 微笑み返す七緒に、春水は落ち込む。
 七緒の誕生日に、清楚な着物を贈り、早速七緒が着て、春水の誕生日に日付が変わると同時に来てくれたのだ。
 着物の質の良さに、女が自分の言い分を信じてくれたのは助かった。下心があるなら、女のように寝巻か、浴衣で来ている方が自然なのだから。
「去りぎわの一言も酷いよ…」
「…疑われず済みましたでしょう?」
「…そうだけどさぁ…」
 嘆きながらも、七緒の着物を探っていく春水の手の器用さを、七緒はやんわりととどめる。
「あ、京楽隊長。ほどほどにお願い致します」
「何で!?ボクの誕生日でしょう!?好きにしていいじゃないか!!」
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