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□追い駆けっこ
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「すみません!そのパフェを譲ってちょうだい!嵐がくるのっ!」
「寄越せっ!」
七緒と剣八の迫力に、注文していた主も店員も頷き慌てて渡す。
「ありがとう。奢りますから、そちらの方へ」
「はい」
「俺に付けとけ。どうせこれだけで終わら…」
二人が矢継ぎ早に指示をしているところへ、春水が飛び込んできた。
「剣ちゃん!」
「七緒ちゃんっ!」
席に着いていた剣八と七緒に、恐ろしい表情で詰め寄るやちると春水。剣八も七緒も椅子に座ったまま、仰け反った。
「…やちる!これでも食って落ち着けっ!!」
剣八が差し出したのは、この店人気のパフェだった。
「わああ!おいしそう!」
やちるの瞳が輝き飛びつく。
「京楽隊長、あの…」
「何?七緒ちゃん」
「……あの…私を食べられます?」
七緒は頬を染め、春水に尋ねる。
「そうだね、たっぷりとね」
春水は人の悪い笑みを浮かべ、七緒を抱き上げ何処かへと移動した。
「…やれやれ…。一体なんだったんだ?」
剣八が大きく溜め息を吐く。
「……剣ちゃんも、七っちも無防備すぎよっ!」
やちるがパフェを頬張りながら、剣八を見上げる。
「ああ?」
「剣ちゃんも、七っちも、もてるんだから!もう少し自覚してちょうだい。あたしが、あそこでカンシャクおこさなかったら、告られてたんだからねっ」
やちるの説明に、剣八は唖然としてやちるを見下ろす。
「剣ちゃんに持っていかれた方が、告られるの見るよりマシって京ちん言ったのね。あたしもそう思ったから、剣ちゃんが七っち持ってくよう仕向けたの」
やちるの言葉の半分も理解できないが、はっきり解った事は、やちるの機嫌はさほど悪くなく、七緒は春水の嫉妬に突き合わされると言う事だ。