□満たされたい
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「…うっ…ん…」
「んんっ!んっ…は…はぁ…はぁ…」
 春水は身体を震わせると、素早く離れた。七緒は春水に優しく横たえられ、大きく呼吸を繰り返した。
 春水は寝台の下へと座り込み、呼吸を整える。
 ちりんと窓に掛けられた風鈴が鳴り、夜風が室内へと送り込まれた。汗で濡れた身体を夜風が冷やす。その心地よさと軽い倦怠感に、思わず目蓋を閉じた。
「…隊長…風邪を引いてしまいます…」
 七緒が汗を拭うようにと手拭いを手渡す。
「…うん…」
 頷き手拭いを受け取るが、心地よさに負け行動に移すことができないでいる。それは七緒も同じようで、身体を横たえたまま、寝台の上から見える春水の髪に指を絡ませ、ぼんやりと指先だけでいじっている。指先に春水の柔らかな髪を絡めながら、ぽつりと呟いた。
「………」
「…ん?何か言ったかい?」
 春水は首だけを七緒へと向けて尋ねる。
「……物足りない…」
「は?」
「…いつもネチネチと欝陶しいくらいですのに…」
 七緒は指に絡めた髪をクイと引っ張る。
「あたたた」
「……」
「七緒ちゃんったら、しつこいの好き?」
「………知りません…」
 嬉しそうに見上げる春水の視線から逃れるように、七緒は寝返りを打った。
「…七緒ちゃんっ」
 春水が七緒にのしかかる。触れ合う肌の熱さと汗と臭いに、七緒は身体を震わせる。
「ん?冷えちゃったかな?」
 手にしていた手拭いで七緒の汗を拭う。
「…春水さん…」
 七緒は春水の手を止め、見上げた。その瞳は熱っぽく潤んでいた。
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