□満たされたい
7ページ/9ページ

 春水が喜ぶ様を見る事が嬉しい。

「これだけですよ。明日も仕事があるんですから」
「いやいや、七緒ちゃんと愛し合って、風呂に入って、お洒落に一杯交わせるのは最高だよ」
 七緒が苦笑いで付け加えるが、春水は気にする所か上機嫌だ。
「…そういうことを、おっしゃらないで下さいっ」
 春水の明け透けな言葉に七緒は眉根を寄せ、睨み付ける。
「だって、七緒ちゃんが誘ってくれて嬉しいんだもん」
「……お酒、差し上げませんよ」
「そんなこと言わないでよ、七緒ちゃん」
「…全く…」
 それでも七緒は猪口を春水へと手渡し、酌をする。春水も七緒へと酌をすると、カチンと猪口を合わせ、口を付ける。
「…ぷはぁっ!風呂上がりにきんきんに冷えた、酒っ!最高だね」
「ふふ、そうですね」
 こればかりは春水の意見に同感だ。


 久しぶりに体を重ね、風呂上がりの一杯に、二人とも睡魔に襲われ、寝台へと潜り込んだのでした。



 翌日、春水は十三番隊に姿を見せた。

「……このくそ暑いのに、暑苦しい顔を見せるな…」
 夏バテと夏風邪に悩まされ、床を上げることの出来ない十四郎は、見舞いにきた友に毒づく。
「…むふふ。ボク絶好調だもん」
 十四郎は春水のヤニ下がった表情に、渋面になり、枕を投げ付けた。
「今日はお前の惚気に付き合う気力はないぞっ!」
「え〜!聞いてほしいのに〜」
 軽がると枕を受けとめ、枕を抱き締めくるくると回る。
「伊勢君、連れ帰ってくれ」
「はい!失礼します!京楽隊長!!!帰りますよ!」
 七緒の気配に気付いた十四郎が声を掛けると、七緒は勢いよく戸を開け――それでも、十四郎へ目礼をし――春水の耳を引っ張り連れ出す。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ