□愛ゆえに
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 七緒は疾走していた。
 少しでも速く、遠くへと逃げる為に。


「七緒ちゃんが逃げ切れたら、言うこと聞くよ」

 薄く笑みを口元に浮かべ、軽い口調だったが、瞳は冷たかった。
 背筋に震えが走る程の迫力に、七緒は何時の間にか、春水に背を向け走りだしていた。

 静かに冷たく、それでいて嵐のように荒れ狂う激しい怒り。
 何時も穏やかな春水が、一瞬にして変わってしまう程の…。
 嫉妬。
 春水が唯一管理しきれない感情。


 嫉妬されて嫌と言うよりも、嬉しくはあるのだが、些細な事でも嫉妬されるので、七緒は少し困ってしまうのだ。
 愛しい人の怒り狂う姿を、七緒は見たいとは思わない。普段だらしないと叱ってはいるが、自然体の春水の方が何倍も良い。


「…捕まえた」
 春水の声が耳元で聞こえたと思った時には、七緒の体は動かなくなっていた。
 背後から左胸を鷲掴まれ、片手は袴の脇から手を突っ込み、裾を分け入ってくる。

「…た…い…」
 自分でも驚く程震える声が出る。
 だが、春水は七緒の耳を舐めしゃぶり、左手は七緒な胸を死覇装の上から荒々しく揉み、右手は襦袢も湯文字も巧みに避け、秘密の花園へと到達する。

「…や…隊…長」
 体を捩って逃れようとするが、春水の力の掛かり具合が巧みで、ぴくりとも動かない。自由になるのは指と左足だけだ。
「…逃げ切れなかったから、言うこと聞いてあげられないなァ…」
 熱い息と共に耳元で囁かれ、身震いする。
「…ぁ…ゃ…」
「……あ、こうされたくて、わざと捕まった?」
「違っ…ん…」
 春水に囁かれ、指が蠢く度に、七緒の身体は反応を示してしまったのである。七緒は否定するが、身体は反対に春水の指の動きと声に、解されていってしまう。
「身体は正直だ」
「や…です…」
「そう?絡みついてくれるけど」
 指の動きが激しくなると、卑猥な水音が響く。
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