□二度寝
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「そろそろいらっしゃる頃だと思いまして」
 七緒は起き上がり、絹の掛け布をよけて座り春水を見上げる。
「…ちぇ、寝込み襲って、驚かせたかったのになぁ」
 春水は苦笑いを浮かべ七緒の隣へ腰を下ろし、足を伸ばす。
「私もそうしたかったのですが」
「え?」
「誠に残念ながら、お月様が来てしまいましたので」
 七緒は小さく溜息を吐き出し、苦笑いで春水を見上げた。
「うっそ、何時っ!」
「数日前に…」
「うわぁ…それでここの所、あんまり探しに来なかったのか…」
 春水は大袈裟に嘆き、寝台へと倒れこんだ。
「…ちょっと早くない?先月は十日くらいだったよね」
 春水の疑問に七緒は寝転がった春水を見下ろし、睨み付ける。
「隊長」
 春水は肘枕をして七緒を見上げた。
「ボクの誕生日にぶつからないかと、冷や冷やしたから、覚えてたの」
「普通の男性なら、気にしない所です」
「ボク、普通の男性じゃないから気にする」
「全く…」
「ま、七緒ちゃんの誕生日に少し残念だけど、ボクの誕生日には大丈夫だよね?夜ばいしてよ」
「嫌ですよ」
「こうボクが寝てる所にこっそりきてさ、七緒ちゃんがボクの上に乗っかって…ぶはっ!」
 七緒は春水の妄想を止めるべく、枕を手にして遠慮なく力いっぱい、顔へ振り下ろした。
「変な妄想しないで下さい」
「欲求不満だからするもん」
 春水はごろりと向きを変えて、七緒の腰に抱き着いた。
「……ん…」
 不意に腹に痛みが走る。春水は起き上がって座り七緒を引き寄せて後ろから抱き、お腹に手を当てて温めた。
「腰は大丈夫かい?」
「ええ、もう今はお腹だけ…」
 一番酷い痛みの時期は越えてはいたが、七緒は遠慮なく春水の逞しい胸にもたれて、お腹を温めてくれる大きな手に、自らの手を重ねた。
「…こういう時ばかりは、隊長の手は助かります」
「手だけかい?」
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