□二度寝
1ページ/7ページ

 それは七緒の誕生日の数日前の事だった。
「はあ…先月から嫌な予感はしてたのよね…」
 七緒は青ざめ大きな溜息を吐き出した。
 それでも気を取り直して厠を出ると、サボっている春水を捜す事を諦めて、仕事に専念することにした。
 しばらく、定時に上がって、早く体を休める事を選んだのだった。




 一方、何時まで経っても探しに来ない七緒に、春水は首を傾げていたが、数日後に控えた七緒の誕生日を思うと心配も不安も消えた。
 何もかも、七日に解る筈だと。

 春水は柔らかな草の上に寝転び、笠を顔に被せて眠りに入った。
 

 そして、七緒は六日も定時には仕事を終え、翌日の休みに備えて辰房へ幾つかの指示をした。
「お任せ下さい」
「…ええ、恐らく明日は隊長もサボるでしょうけれど」
「そうでしょうな」
「まあ、あなたの誕生日休暇はその分ゆっくりして頂戴」
「ははっ、それは遠慮なく」
 ここ八番隊は、女性死神協会が提案した誕生日休暇なる(やちるの我が儘で決定した)制度を、十一番隊と共に上位席官がきっちりと実践している隊だ。
 七緒は女性死神協会の副会長だし、春水は休み大歓迎を普段から実践しているので、いい隠れみのになっている。
 七緒は辰房に指示を出し終えると、真っ直ぐに自室に戻り、早めの夕食を取り、さっと風呂を浴びて、早々に寝台に潜り込んだ。
 まだ、日が残り蒸し暑いが、疲れていた七緒はあっさりと眠りに落ちた。


 そして、子の刻近く、七緒の部屋へ忍び込む影があった。
 足音をたてず、霊圧と気配を消して七緒の眠る寝台へ忍び寄り、静かに手を寝台へと着いた。

 遠くから日付の変わる鐘の音が聞こえる。
「七緒ちゃん、誕生日おめでとう…」
 囁きながら唇をそっと重ねて離れると、七緒がぱっちりと目蓋を開けた。
「ありがとうございます」
「起きてたの?」
 寝ぼけてはいないはっきりとした声に、春水は驚き目を丸くする。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ