□進化・sideB
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「…にゃああ…」
 艶っぽい声が室内に響き渡る。
 女の首筋に顔を寄せていた男は、口端をにぃっと吊り上げた。
「ここがいいん?にゃん菊…」
 舌を出し、首筋に添って鎖骨から顎へと舐め上げる。
「はあああん…」
 仰け反り喉を晒し、悶える姿に、男は嬉しそうに笑う。
「にゃん菊はやっぱ、可愛いなぁ」
「…変態…」
 乱菊は瞳を潤ませ、ギンを睨みつける。
「だって、にゃん菊の方が素直やもん」



 今回の薬はマユリにかなり難題を押し付けていた。
「なあ、猫って耳の裏とか顎を撫でるとゴロゴロ言うやん?あれ、性感帯にならへんかなぁ?あ、猫語は必須な」
「……よくそんな発想が出るもんだネ」
 マユリは呆れ顔でギンを見返した。
「金に糸目はつけヘンよ?」
 ギンは近頃はマユリの開発した、猫耳尻尾の生える薬に金を注いでいる。金を払う代わりに、あれこれ注文をつけているのだ。
「まあ。今の所他に興味をそそる研究もない事だし、お前の遊びに付き合っているけどネ」
 どうせなら、無理な話の方がマユリの気を引けるというものだ。ありきたりの愛玩だけなら、マユリの気は引けない。
「お前の方は動物にならなくて良いのかネ?」
「何?なんか面白いのあったん?」
「…獣の交尾は、子孫を残すために、数少ないチャンスで確実に、なのだヨ」
 マユリは口端を吊り上げ、ギンを見返した。

 
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