□時の流れ
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 何時まで経っても探しに来ない。
 春水は身体を起し、辺りを見渡す。七緒の姿も、霊圧も感じられない。
「……怒らせた…かな?」

 春水は笠をかぶり直し、立ち上がり、ゆっくりと八番隊隊舎へと戻って行った。


「ただーいま」
「……」
「あれ?聞こえなかったかな?七緒ちゅわん、ただいまー」
「あ、はい、お帰りなさいませ」
 耳元で言われ、七緒はようやく気がつき、慌てて頭を下げる。
「…どうしたの。心ここにあらずだね…」
 七緒の席の側にしゃがみ込み、見上げる。
「………私が…死神になって、随分時間が経っていたのだと…思ったのです」
「うん?」
「……父が…亡くなりました…」
 春水は息を飲んだ。
「………血の繋がりもなく、死神になってから、数えるほどしか会っていませんでしたのに…。やはり、一度『父』と呼んでしまった方が亡くなるのは…淋しいものですね…」
「知らせが…来たのかい…」
「はい…眠るように、亡くなったのだと…」
 七緒の手が震えていた。
「七緒ちゃん…」

 七緒は流魂街に辿りつき、家族を得ていた。
 比較的裕福で、父と母と兄と呼ぶ人が出来た。その中で、七緒だけが死神となった。母も兄も事故で既になく、父がいただけだった。
 流魂街で亡くなったということは、転生し、現世に生まれたということなのだが。

「…間に合わなくて…ごめん…」
 春水は七緒の震える手を握り、笠を外し頭を下げた。
「…いいえ…」
 七緒はそっと頭を振る。
「私が…我儘を言っただけですから…」
「……絶対に…説得するよ…」
 七緒を強く抱き締め、改めて誓う。
「…はい…」
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