□造られしモノ
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 女性死神の膝枕で、男性死神が横になり、桜を眺める。
 日差しが温かで、心地よい風が吹き、桜も見頃となると、あちこちでこんな羨ましい光景が見られる。
 ソメイヨシノの桜並木のある場所でも、膝枕で横になっている男がいた。
 ただこの二人はある意味で注目を浴びる。
 女性の席官が上で、男性の席官が下であり、二人とも有名であるからだ。
 だが、有名は有名でも悪名の方の為、人は遠巻きで近寄らず冷やかしもない。二人はお陰で静かにのんびりとしていられる。
 
 男は短い死覇装の裾から覗く、女の滑らかな足を撫で、悪童のような笑みを浮かべ、女は驚き目を丸め、次いで口元にほんのりと笑みを浮かべた。
「…膝枕には好いよな、この丈」
「…そう…ですか?」
「ああ、しかも俺には髪がねぇし、直に肌触りが感じられるってのは好いな」
「…そうなのですか」
 女はそっと男の頭を撫でてみる。肌に直接触れ、感触を確かめる。
「……好いですね」
「はははっ」
 女の感想に男は軽く笑い声を上げた。女も目を細めて、笑みを浮かべ返す。


 何となく、二人揃って桜を見上げる。
「……桜っつーと、花見酒で宴会ばっかだったけど、こーしてのんびり眺めるのも、良いもんだな…」
 男の呟きに、女は黙って見上げるだけだ。
「…ネム…?」
「……一角さん…この桜の名を…ご存じですか?」
「ソメイヨシノだろ?」
「はい…」
 花は知らずとも、この桜の名は知っていた。花見をしていれば、自然と耳にするからだ。
 ネムは一角を見ず、桜を見たままだ。
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