□独り占め
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「うわ〜!綺麗っ!」


 瀞霊廷は環境が整備され、色彩乏しい。
 各隊に庭があったりするが、流魂街の自然の多さと比べると、やはり色彩が乏しいと感じる。
 だからこそ、瀞霊廷にも自然が広がる場所が幾つもある。人の手が入り整然としていても、草木であることには変わりなく、美しく見えるものである。
 それが、群勢だったりすれば尚更だ。
「すごいね!日番谷君!一面ピンクだよっ!」
 桃は感激のあまり、持っていた藤籠を抱き締める。
「ああ…」
 眼下に広がる丘一面の芝桜に、冬獅郎も言葉少なに頷いた。
 何せこの場を冬獅郎へと教えてくれたのは、桃の心の大半を締める主からだからだ。桃の上司は、長く瀞霊廷にいるものだから、穴場という場所を良く知っているのだ。
 気分転換にと教えられてきたのだが。

「ありがとう!日番谷君っ」
「日番谷隊長だろ」

 本当は、惣右介に教えて貰ったのだと、白状するつもりだった…。

「日番谷君と見れて嬉しいっ」
 
 一面芝桜の中で満面の笑みを浮かべる桃に、冬獅郎は言葉を飲み込んだ。



 この笑顔を独り占めしたいと、思ったのだ。
 

「…腹減ったな…」
「そうだねっ!お弁当食べようかっ!」
 二人は眺めの良い場所を探し、腰をおろす。
「はい、どうぞ」
 桃が藤籠を開け、中を冬獅郎が取りやすいように、差し出す。
「おう」
 籠の中へ手を伸ばし、オニギリを一つ手に取り頬張る。
「どう?」
「…うまいぜ」
「良かった!あ、日番谷君の好きな出汁巻き卵もあるんだよ」
「やった!」
 好物を桃が作ってくれた嬉しさに、子供らしく瞳を輝かせた。
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