2
□月に誘われて
1ページ/4ページ
「…ん……今…何時…」
不意に目が覚めてしまった。頭がすっきりと冴える程に。今日は満月でもないのに、障子越しの月明りがやけに明るいと思いつつ、時計を確認して驚く。
「え?まだ、一刻しか経ってない?」
眠ってから、一刻しか経っていないのに、疲れも取れてすっきりとしている。もう一度眠り直そうと布団を被ってみたが、目が冴えてしまっていて眠れない。
寝返りを打ち、眠ろうと努力してみたが、やはり眠れない。
大きく溜息を吐き、眠ることを諦め、眼鏡を掛け、蝋燭へ火を灯し、本を手にする。
「たまには、ゆっくりと読むのも良いわね…」
静かな室内に、紙を捲る音だけが響く。
その頃、春水はやっと居酒屋から出てきたところだった。存分に飲み、良い気分で八番隊隊舎へと戻る所だった。
空がやけに澄んでいて、月が明るかった。上弦の月であるにも関らず、くっきりとはっきりと白く明るさが際立っていた。その月明りに誘われるように、空を見上げ、とある一室に灯りが点っている事に気が付いた。
「うん?あそこは…七緒ちゃんの部屋…」
八番隊の宿舎を見上げて首を傾げる。
「まだ起きてるのかな?」
春水は、足取り軽く迷わず七緒の部屋へと真っ直ぐに歩いて行く。
「な、な、お、ちゃん?」
戸の前で小さな声で、呼びかける。
「…京楽隊長?」
七緒は細く戸を開け、目だけを見せ、確認をすると、そっと開け春水を迎え入れる。
「灯りが見えたからさ、まだ起きてるの?」
「……いえ…目が覚めてしまって」
七緒は苦笑いを浮かべ、お茶を淹れようと準備をする。
「…七緒ちゃん…」
春水は七緒を後ろから抱きすくめる。
「…隊長…どれだけ飲まれたのです?」
会話をしていただけでも酒臭いと思っていたが、抱き締められ密着すると、より酒臭さが解る。