□誕生日プレゼント
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「お早よう!七緒ちゃん!はいっ誕生日おめでとう!」
 七緒が執務室へと入るなり、甘い高貴な香を漂わせて、春水が朝一番声を掛けた。
「お早ようございます。お祝いのお言葉ありがとうございます」
「はいっこれ!」
「白百合ですか、ありがとうございます」
 春水が差し出した花は、百合だった。先刻から漂う香はこの花からだった。
 七緒は花瓶を取出し早速生ける。
「後ねぇ、はいこれ」
「…ありがとうございます」
 差し出された包みを、七緒は一瞬の躊躇の後に、礼とともに受け取った。
「お早ようっ!七緒!」
「乱菊さん。どうされたんです?朝早くから…」
「どうって、今日はあんたの誕生日でしょ?プレゼント持ってきたのよ。はい、副官一同から」
 元気な挨拶と供に現れた乱菊は小脇に抱えていた包みを、七緒へと渡した。どうやら副官同士で贈りあっているらしい。
「いつもありがとうございます」
 七緒は乱菊からの贈り物を素直に受け取った。その様子を春水が見逃す筈がない。唇を尖らせ、拗ねた口調で訴える。
「ひどいや、七緒ちゃん!乱菊君たちのは素直に受け取って、ボクからのは戸惑うなんてっ」
「…それは…だって隊長の下さる物はいつも高価過ぎるからっ」
「何?そんなにすごいの?そういえば毎年はぐらかされて、何貰ってるか聞いたことなかったわね」
 七緒の発言に、乱菊が興味深そうに身を乗り出す。
「それ程高価なものではないんだけどなぁ…」
 春水は苦笑いを浮かべ、顎を撫でる。
「隊長は、ご実家が裕福で今もさほどお金に執着をもたれないから、そう感じるんです。一般的には高価なものですっ」
 七緒は眉根を寄せ、乱菊にも解るよう説明をする。
「成る程ね。それならあたしの価値感は七緒寄りの感覚だわ。で、何?」
「…今年はまだ…」
 乱菊の問いに七緒は机の上に置いた贈り物へ、視線を落とした。
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