◇BLEACH

□おさんぽ
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「ね!剣ちゃん!」
「何が、ね、だ」
 唐突なのはいつもの事。やちるはよく思いつくままに発言をする。
「うん。ね、見ていい天気だよ」
「それがなんだ?」
「散歩しよ?」
「一人で行ってこい」
「やだ!剣ちゃんと一緒がいい!」
 駄々をこねるのもいつもの事。剣八は面倒臭そうに、表をみる。
 雲一つ浮かんでいない澄んだ青空。時折吹く風も心地良い。成るほどこれは確かに散歩日和というものだ。
 剣八は無言で立ち上がり、やちるを見下ろす。
「行くか」
「うん!わーい!剣ちゃんとお散歩!」
 散歩と言ってやちるが歩く訳ではない。
 勢い良く剣八の背に飛び乗り、肩越しに顔を出す。



 のんびりとあてどなく歩いていくと、ぽっかりと開けた場所に出た。
「うわぁ!気持ち良さそう!」
 やちるが思わず歓声を上げる。
 なだらかな丘に、大きな木が数本。日当たりの良い斜面は、一面柔らかな、背丈の低い雑草でおおい尽くされている。
「ん?ありゃ京楽じゃねぇか」
「ホントだ、七っちもいるよ!」
 よくよく見れば、大きな木の下で、七緒は木にもたれ、春水は七緒の膝枕で昼寝をしているではないか。
「剣ちゃん、あれ」
 やちるの目が輝いているが、剣八は呆れた表情で返す。
「バカ、お前がやったら潰れるだろうが」
「ちぇーっ」
 剣八は、二人の見えない位置の木の下に来ると、やちるを降ろして寝転がる。
 程よく暖まった草が気持ち良い。
「やちる」
 やちるを手招きし、隊長羽織を広げると、やちるは歓声を上げ、剣八の懐に潜り込む。
「気持ちいい〜!」
「ホントにな」
 剣八の腕を枕にすると、やちるは直ぐに睡魔が襲ってきたらしい。小さく欠伸をする。
 その様子を見ていた剣八も、欠伸をする。
「欠伸移っちゃったね」
「ああ…」
やがて、二人とも言葉少なになり、寝息を立てはじめた。
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