◇BLEACH

□誘われて
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「七緒ちゅわぁ〜ん」
 こんな猫撫で声を出すときは、ろくなことじゃない。
「何でしょうか」
 できるだけ、突き放すような冷たい声で応じる。
「見て御覧、すごく良い天気だと思わない?」
 言われてみれば、雲一つない、澄み切った青空。何処までも高く見える。
「…そうですね。いい天気です」
「こんな日は外に出て気持ちいい風に吹かれるのもいいものだと思わない?」
「駄目です」
 七緒はぴしゃりと、突っぱねる。
「そんなつれないこと言わないでさ」
「この書類が片つかない事には、私は落ち着いて、外に出られません」
 この言葉に、春水の目がきらりと光る。
「じゃ、これが片つけば、出てもいい?」
「そうですね。書類が片つけば」
「よし、じゃあ、こうしよう。外に出て気分転換して、それから帰ってきたら真面目に仕事をする!うん、いい考え」
 いつもの七緒なら、こんなふざけた提案に乗るはずはない。だが、この日ばかりは珍しく違っていた。
「……解りました。その代わり、戻ってきたら真面目に仕事をしてください」
「いいの!?」
 珍しく通った提案に、春水は驚く。
「駄目といったところで、仕事に進展は見られないでしょうから。それでしたら、本当に気分転換をして頂いて、仕事に取り組んでいただいた方が良いと言うものです」
 淡々と語られる台詞に、春水は苦笑いを浮かべる。
「ま、でも、折角お許しが出たし、早速出かけようか」
「はい、いってらっしゃいませ」
「何言ってるの、七緒ちゃんも行こう」
「はい?」
「折角いい天気なんだから」
 このまま、押し問答して時間が流れては、時間の無駄というものである。本当に外は良い天気で、七緒は溜息を吐きながら承諾した。
「わかりました」
 隊長一人散歩に送り出すよりは、自分が目付けとなり、時間を管理した方が、無駄がないとも思えたのだ。

 七緒は第三席の辰房に、断りを入れ、揃って外へと足を踏み出した。
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