◇BLEACH

□はじまり
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「はあ…辱めたい…」
 ちびりと酒を舐めながらぽつりと呟いたのは春水。
「京楽…脳内の言葉が、漏れてるぞ…」
 呆れた視線を向けたのは、十四郎。長く友人をしているだけあって春水の言葉に、慌てて不様に振る舞うことはない。

 ちなみにここは、十三番隊の隊首室。今日も寝込んでいる十四郎を見舞いに来た。
 と、言うのは勿論口実で、仕事のさぼりである。世間話(?)をしながら昼間から手酌で一杯やっているのだ。

「あの眼鏡を外したい、ひっつめた髪をほどきたい、乱れる姿を見てみたい、そう思わない?」
「思わん」
「浮竹…」
 哀れむような視線に気が付き、十四郎は溜め息を吐ききっぱりて言い切る。
「あのな、お前が伊勢に対してそう考えるのは、伊勢を特別だと思うからだろう。俺は伊勢はお前の部下だという認識以外はない」
「あ…そう、そうなんだ」
 十四郎の言葉に嬉しそうに表情を崩す。
「うわっ、お前その顔で伊勢に会うなよ。間違いなく逃げられるぞ」
「うふふ…、ライバルが確実に一人減ったと解って嬉しいンだから、しょ〜がないじゃない?」
「俺が?」
「真面目で優しくて好い男。七緒ちゃんの好み」
「じゃ、お前が真面目になればいいだろう」
 薬湯を酒でも飲むように、口に運ぶ。
「いや、それがかえって気味悪がられちゃって…」
「日頃の行いというものだな」
「ああっ!あの華奢な七緒ちゃんを抱き締めてみたいっ!」
 両腕で自分を抱き締め悶える春水に、お前の力で抱き締めたら、伊勢が潰れるぞと突っ込みたい気分になる。
「伊勢も気の毒に…こんなのに惚れられて…」
 親友だけに物言いに遠慮がない。
「あ、ひどい」
「人の枕元で、惚れた女への欲望を聞かせるのはひどくないのか?」
「だって、副隊長に惚れたなんて話、他にできないし」
「松本には?」
「笑われた」
「だろうな」
 松本乱菊は十番隊の副隊長であり、七緒と同じ女である。立場上乱菊と七緒も仲が良く、春水とは酒飲み友達であることから、真っ先に話はしたが笑って返された。

「何時だったか、藍染隊長か、東仙隊長か、浮竹隊長の下が良かったって愚痴ってたわよ」
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