◇BLEACH
□居場所
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やちるの勘程あてにならないものはない。
それでも、剣八は何だかんだ言って任せるのだ。
「剣ちゃん、あっち!」
「あっちはさっき行っただろうが!」
「じゃあ、こっち!」
「じゃあってなんだよ」
こんなやり取りをしながら、走り回る。
「隊長…効率悪いっすよ」
一度、一角が剣八にぼやいた事がある。
「俺の勘も大差ねぇからな、どっちでも変わらん」
と、あっさり躱された。
「じゃ、最初から隊長が行くのはダメなんすか?」
「…昔からの癖だな、今更だ」
「昔から?」
「ああ、行き先決めんの面倒臭ぇから、やちるに任せてたからな」
こんな時、一角は二人の絆を見せ付けられるように感じる。
「戻れなくなるとか考えなかったんで?」
「そりゃ、帰る場所がある奴の考え方だな」
剣八は口の端を釣り上げ、片眉を上げる。
一角は黙り込んだ。
帰る場所もなく、ただ生きて行くとしたら。やちるの思うままの道標でも確かに問題ない。自分で何も考えずにただ歩むのと、やちるの奔放な指示で歩むのとどちらがいいのか。
「…でも、副隊長の示すままだと、さぞかし山あり谷ありだったんじゃ」
「平坦な道で楽しいか?」
「なるほど」
なるほど、確かに真っすぐに平坦な道では、強くはなれない。