◇BLEACH
□存在
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「コンッコンッ」
「やちる?」
「あ…剣ちゃ…ケホッ」
ひどく辛そうに咳き込むやちるに、剣八は違和感を覚える。
「おいっ弓親はいるか!」
廊下に面した障子を開け放ち、大声で部下を呼ぶ。
間もなく、弓親が飛んできた。
「何でしょう?」
お呼びですか、等と無駄なことは聞かない。この隊の特徴だ。
「やちるの様子がおかしい」
「失礼します」
剣八の一言で弓親は直ぐにやちるをみる。
「ケホッ…」
「…風邪じゃないでしょうか?四番隊を呼びましょう」
「かぜ?」
「咳をしてますし、熱もあるようですから」
「う〜、ノドがいたいよう…」
やちるが眉を寄せ、喉を押さえる。
「副隊長、寝ててください」
「やだっ!剣ちゃ…ケホッ」
「寝てないともっと悪くなりますよ」
「うう〜」
弓親がやちるを布団に寝かし付けようと苦心する中、剣八は渋面でやちるを眺めていた。
「隊長、四番…隊長?」
「…かぜって何だ?」
「は?」
「いや、何でもねぇ」
剣八もやちるも、流魂街で一番酷い所にいた。治安が悪い場所だったが、上に伸し上がるため一所にはいなかった。疫病のある場所は、強い者もいないし、食物もないので、二人は無意識に避けてきた。
野宿と粗食で、怪我はしても病には掛かったことがなかった。
風邪というものが、病だとも結び付かないのだ。
布団に横たわり、顔を赤くして咳き込み、苦しそうなやちるを見ていられない。
怪我で発熱することはあったが、ここまで苦しそうな表情は初めて見る。
「四番隊を呼んで来ます。隊長、副隊長が起きないように見張っててください」
弓親は四番隊へ走っていった。