◇BLEACH

□やっと…
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 穏やかな秋晴れの午後。
 障子を開け放ち、暖かな風を室内に取り入れてつつ、窓の景色を楽しみ、男二人で酒を酌み交わす。
 気分が良いことともあって、珍しく家主も相伴にあずかっていた。
 酒も入り、春水の惚気がいつもの如く始まったことから、十四郎は不意に今までの疑問をぶつけてみた。

「京楽、どうして伊勢の攻撃を避けたり、止めたりしないんだ?」
 春水は、升の中に残っていた酒を飲み干し、口端を片方だけを釣り上げ、傘を少し持ち上げ、十四郎を見る。
「男は黙って受け止めればいいんだよ」
「その前に、怒らせるような事をしなけりゃいいじゃないか」
 十四郎は呆れた視線を、友人に向ける。
「解ってないなあ、浮竹ェ。七緒ちゃんが怒る時、ボクしか見ないんだよ」
 真っすぐに澄んだ瞳を、自分に向けて来る。他に脇目を振らずに。それがたまらないと春水は言う。
「…解らん」
「そうかい?ま、いいけどね。浮竹が七緒ちゃんに興味持たれるのも困るしな」
「……」
 春水の発想に十四郎は付いていけず、黙って酒を飲む。
「あ、大丈夫か!浮竹には烈ちゃんいるし」
「ぶっ!げほっ、ごほっ、き、京楽っ…」
 突如矛先が自分に向き、口に含んだ酒を吹き出し、盛大に咽ることに。
「隠すなよ、バレバレ。お前さんの好みだろ?」
「な、な、な、何、を…」
 更に背を叩かれ、浮竹はまともに言葉を発することができない。
「あっちも万更じゃなさそうだしねぇ」
「ほ、本当か?」
 春水の言葉に、十四郎は色めきたった。頬がほんのり赤くなったのは、酒のせいではなさそうだ。
「……浮竹、鈍いにも程があるぞ…」
 呆れた視線を今度は、春水が向ける。
「そ、そんな事言われても」
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