◇BLEACH
□おめでとう
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「剣ちゃん!誕生日おめでとう!」
「…ああ」
二人は休みを取って、紅葉狩りに来ていた。
日が一番高い位置に昇った所で、蓙を広げ用意してきた重箱を広げる。
「はい、剣ちゃん!」
お重を一段そのまま手渡す。
「ん」
重箱は、剣八お気に入りの食事処の主人に頼んで作ってもらったものだ。
「そっちの小箱はなんだ?」
「これは後でっ!」
毎年二人だけの誕生日会。
お祭騒ぎが好きな十一番隊だが、剣八とやちるの誕生日だけは、やちるの強い意向で邪魔を許さなかった。
誕生日の存在を知ったのは、十一番隊に入ってからだ。それ以来、剣八とやちるの誕生日だけは、二人きりで過ごす。
一度、十一番隊の隊長なのだから、隊員からお祝いをさせて欲しいと申し出た所、やちるは顔を真っ赤にして怒り、しまいには泣きだしてしまった。それ以来、二人の誕生日には一切口を出さなくなったのだ。
剣八も何も聞かず、何も言わず、ただやちるの望むままに付き合っている。
やちるの用意する誕生日会は、誰の邪魔も入らない二人きりの場所で、少しばかり豪華な食事と、酒で遇してくれるだけなので、喧騒から離れ気楽ではある。
他愛のない話をしながら、食べて飲む。
それだけなのに、心地がいい。
やちるなりに、毎年趣向を凝らしている。最初は握り飯だったのに、いつの頃からか、重箱に変わり、酒も付くようになった。
「お、今日のは兆安の弁当か」
「うんっ!最近好きだよねっ」
「ああ」
剣八は、早速箸を伸ばして口に運ぶ。
「おいしい?」
「ああ」
剣八の返事にやちるは満足そうに頷くと、自分も箸を取り、口に運ぶ。