◇BLEACH

□実験体
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「…これを飲むんすか…」
 机に置かれた薬は、得体のしれない喩ようのない色をしている。
「データを提供してくれたら、ネムとの交際を認めてやらんでもないヨ」
「やります」
 マユリの条件に一角は思わず速答する。

 マユリは忘年会の余興として、不思議な薬を開発している所だった。
 実にならぬ事はしないのだが、今回は珍しく乗り気だ。
 と、言うのも動物の魂と人の魂の融合。しかも、耳と尻尾だけ出し、尚且つその耳と尻尾にだけ個々の動物の特性を残すという、ある意味難易度の高いものだったからだ。
 動物の長所を取り込み人へ応用することは、しばしば試みられて来たことだ。だが、動物の感情をあえて取り込むことはまずしない。その、誰もしない事を、尚且つ短時間で消えるようにという、制限付きにそそられた。
 魂を取出し、部分的に出す事は容易くできたが、子供化したり、動物化したり、一日以上戻らなかったりで、中々思うように事は運ばなかった。
 八番隊の副隊長にまで被害が及び、温和な八番隊隊長より珍しく抗議が来たため、止むを得ず身近で実験体を調達することになり、選ばれたのが、十一番隊の三席だった。
 健康体で丈夫なのはお墨付きだ。隊長、副隊長への余興に使うため、三席の彼ならば霊圧の高さ等も近く申し分ない。しかも、あろうことか、娘に惚れた等と訳のわからぬ事を言っている。
 そんな理由から、彼に白羽の矢を立てた。

「はい、これ飲んで下さい」
 阿近が水と薬を手渡す。煙草を取出し火を付ける。
「ん」
 一角は素直に水と薬を飲む。程なく、犬の耳と尻尾に髭が生えてきた。
「…髭は要らねえなぁ…」
 機器にあらわれるデータと、一角をみてデータを打ち込みなおす。
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