◇BLEACH

□両手一杯
1ページ/3ページ

「剣ちゃん!!おっはよーーーー!!」
 やちるが剣八の布団を盛大に引き剥がす。
「起きて!!起きてーーーー!剣ちゃーん!」
 朝からやけにハイテンションなやちるに、剣八は寝返りを打ち騒ぐやちるを押さえつける。
「…早えぇよ…」
「もう朝日は出てるもん!!起きて起きてっ!」
 剣八を派手に揺さぶるものだから、厭でも目が覚める。
「ふああああ…、何々だよ・・・」
 大欠伸をしながら、渋々起き上がり、布団の上で胡座を掻き頭を掻く。やちるが素早くその膝の上に乗り、剣八を見上げる。
「今日は、あたしのたんじょう日よ!わすれたの?」
「・・・ああ、そうだったか・・・。おめでとうさん」
 欠伸交じりに、やちるの頭を撫で気持の篭らない祝いの言葉を述べる。
「ありがとう!」
 気持ちなど篭っていなくても良い。この日に一番に剣八に祝ってもらえる事が、やちるにとっては重要なのだ。
「剣ちゃん!!ケーキ食べたい!」
「・・・朝っぱらからかよ・・・」
 剣八は溜息を吐き、膝の上に座っているやちるを見下ろす。朝から甘い物など胸焼けがする。しかも洋菓子は甘さが強く、剣八には朝からとても胃に送り込める代物ではない。
「・・・・・・せめておやつの時間にしろよ」
「じゃ、おやつの時にー!買ってね?」
「わかったよ」
 投げやりに答え、やちるを降ろして着替える。やちるの誕生日は剣八も揃って非番だ。着物に着替え、着流しのまま上着を羽織る。
「剣ちゃん、これ着たい」
 やちるがお気に入りの一枚の着物を差し出す。
「自分で着れるだろうが」
「着せて!」
「・・・しょうがねえなぁ・・・」
 剣八はしゃがみ込み、やちるに着物を着せる。その間やちるは笑顔で剣八の仕草を見つめていた。
「・・・・・・・・・これでいいか?」
「うん!ありがと!剣ちゃん!!」
 それからようやく二人揃って食堂へと赴く。
 二人の姿に、今日はやちるの誕生日だと隊員達が気が付き、皆が声を掛ける。
「おめでとうございます。副隊長」
「ありがとー!」
 やちる宛のプレゼントはこの後部屋に届けられる予定だ。
 だが、やちるの誕生日の一番のプレゼントは剣八が供にいることである。隊員達もそれを解っているから、邪魔をしようとは思わない。
 祝いの言葉だけ投げかけていく。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ