◇BLEACH

□交差
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「いつもこうだと嬉しいのですが」
 七緒の本音が思わず漏れる。
「だって七緒ちゃんと、たっくさんおしゃべりしたいんだもん」
 だから、喋り掛けたり、触ろうとして時間が掛かるというのだ。
「喋るよりも、仕事をしてくだ……くしゅんっ」
「…後これ届けるだけだよね?ボクがしておくから、七緒ちゃんはもう上がって、体温めて休んで」
「ですが…」
「なんならボクが温め…」 
「結構です!では、お言葉に甘えて失礼します!」
 セクハラ発言をぴしゃりと封じ込め、身を翻そうとして、転びかける。
「おっと、大丈夫?熱でもでてきたかな?」
 瞬歩で回りこみ、七緒を抱き支える。
「す、すみません。着物の裾を踏んでしまっただけです」
 もともと女物の着物であるが、春水ほどの長身が羽織れば羽織の丈にしかならないが、七緒では裾を引きずってしまう。
「ああ、そうか」
 着物を手にし、そっと裾を持ち上げる。
「…七緒ちゃん、桃色も似合うね」
「そんなこと…」
「おっと、これが急ぎなんだよね。じゃボクいってくるから、七緒ちゃんは、ちゃんと帰って寝るんだよ?」
 七緒の否定の言葉など聴きたくないと思った春水は、話題をそらす。本当に似合うと思うのに。
「あ、隊長…」
 春水は書類を手にし、さっさと出ていってしまった。

 七緒は溜息を吐くと、羽織った着物を丁寧に畳み、小脇に抱えて、部屋へ帰った。


 部屋に戻ると、まずは春水から借りた着物を干し、濡れた死覇裳も干す。
 風呂に入り、思っていたより冷えていた体を温める。
 湯冷めしないよう、部屋羽織を取り出そうとして、春水の着物が目に入った。
 そっと袖を通して鏡を見る。
「嘘つき…似合わない…じゃない…」
 自分にこんな明るい色は似合わないと思った。春水の欲目…いや、お世辞に決まっている。あの人の口癖なのだ。
 女性には優しい。
 誰にでも。

「寝よう」
 きっと風邪を引きかけて気が弱っている所為だ。隊長が気を利かせてくれたのだから、風邪などひくわけにはいかない。
 布団に入り目を閉じると、やがて眠りに落ちていった。
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