◇BLEACH
□指先
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「…お願いします」
そっと春水の大きな手に、自分の手を乗せる。
「はい、お願いされます」
大きな掌で、七緒の手を包み込む。
「随分冷えてるね」
「はい、最近は冷え込むようになりました」
「足は大丈夫?」
「足袋を履いているのでまだマシです」
春水はこの季節が大好きだ。
七緒と少しでも触れたくて、わざと冷え込むまで仕事をサボる。
見つからないように、霊圧を消してまでサボるので、この季節は七緒は3回に1回は探さない。無駄な時間を費やすより、先に仕事を進めて、帰ってくるのを待つ。
帰ってきてから、こうして七緒に触れれば満足して、ちゃんと仕事をこなすからだ。
指先が冷える度に、仕事は中断するけれど、集中して行なうので効率は良かったりする。
酒の力も手伝って、汗ばむ程に温かい春水の手は、七緒の手をじんわりと温めていく。
お茶の温度の方がよほど高いはずなのに、あっというまに冷めてしまう。
こうして、春水に温めて貰う方が温かさは持続する。
「ありがとうございます。温まりました」
「そう?また何時でも言って」
「はい」
この時ばかりは、七緒も素直。
セクハラとか言わない。
だって、これは私だけの特権。
隊長のぬくもりは、私が独り占め。
他の子にはあげない。
だから、サボリを見逃してあげているのです。
おしまい。