◇BLEACH

□振り向かない
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「すみません!京楽隊長を見かけませんでしたか?」
 礼を言い掛けた所に、新たな副官が加わる。八番隊の伊勢七緒が息を切らせて四人の元へ駆け寄ってきた。
「今日はお見掛けしていないです」
 と、イヅル。
「朝なら、甘味処にいましたけど…」
 これは修兵。
「先刻、そっちの屋根の上で見掛けたが」
 鉄左衛門の情報が一番近かった。
「ありがとうございます!」
「あのっ!お忙しい処すみませんが、この書類が解らないんです」
 礼を言い、去ろうとする七緒を恋次が慌てて引き止める。この才女が書類関連は一番詳しい。彼女が解らなければ仕方がないと諦めがつく。
「見せて下さい」
「はいっ!」
「…ああ、これでしたら…」
 眼鏡を押し上げ、書類に目を通すと直ぐに解ったらしい。他の副官も身を乗り出して、聞き入る。
 七緒は手にしている分厚い本の頁を捲り、皆に向けて見せる。
「こちらの頁を写して、書類に添えて、隊長印と副隊長印を押して、一番隊へ提出してください」
「ありがとうございますっ!助かりました」
 本の題に頁数と書類題目を紙片に書き付けて懐へ入れる。
「どういたしまして」
 七緒が微笑して返す。
「七緒!」
 敬称も付けず呼び捨てた声に、全員が顔を上げて向くと、声の主人は男達の迫力に、ぎょっとして後ずさる。
「伊勢副隊長の知り合いっスか?」
「…ええ、古い知り合いって処かしら…」
「七緒、久しぶりっ」
「お久しぶりね」
 微かに笑みを浮かべた七緒に、男は調子にのり、気やすく馴々しく、話し掛けてくる。
「な、七緒…この人達は…?」
「あなた、相変わらず自分の事以外興味がないのね。三番隊、六番隊、七番隊、九番隊の副隊長方よ」
 溜め息を大きく吐いて、それでも紹介をする。
「な、なんで七緒がそんな人達と話してんだよ。はっ!七緒が可愛いからナンパか!?」
「……私も随分前に副隊長になっています」
「は!?」
「今していたのは仕事の話です」
「あ、ああ、そうなんだ…」
 男の失礼な態度に、七緒に淡々と説明をすると、男は居心地が悪そうに辺りを見渡す。
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