◇BLEACH
□珍しき事
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「…ん…七…緒?」
「隊長?解りますか?布団を敷きましたから、移動してください。このままでは風邪を引いてしまいます」
再度呼びかけ、布団へ行く様促すと、春水は重そうに体を起こし、布団へ倒れ込むように移動する。
ごろりと仰向けになると、七緒を濁った瞳で見つめる。
「…な、何ですか?」
「……俺以外の男と、話すなよ…」
酒で喉が焼けたらしく、低く掠れた声だ。
「…はあ?」
七緒は理不尽な物言いに、一瞬何を言われたか解らず、間抜けな返事をしてしまう。
「…他の男と話すな」
「……隊長?何をおっしゃっているか解ってます?」
「解ってるさ」
僅かな灯りも眩しいのか、腕で目を隠し、瞼を閉じる。
「今日は、何をご覧になられたのですか?」
七緒はできるだけ優しい声で問い掛ける。
「……吉良君と楽しそうに喋ってた…」
「お互い、上司がサボり魔ですから、苦労話で盛り上がっていたんです。第一、吉良副隊長は、雛森副隊長に片思いしているんですよ。私は対象外です」
あやすように、宥めるようにできるだけ優しく説明する。刺激しないよう、彼等を副隊長と付けて呼ぶ。
「……俺だけ見ろよ」
「見ています。もっと見て欲しいなら、サボらないで下さい」
春水の我侭に、七緒は厳しく返す。
春水は喉の奥で笑うと、七緒の腕を掴み、布団へと引き摺り込む。
掴まれた腕の痛みに、眉を潜める。
酒臭い息が近づいて来たと思ったら、唇を塞がれた。
執拗に舌を吸われ、絡まれる。ただ、貪るだけの荒々しい口付け。
喉に酒混じりの唾液が流れ込み、七緒は咽る。
「んん!!」
春水の胸を乱暴に叩き、一方的な口付けから逃れると、激しく咳きこんだ。
「けほっ…」
普段の春水なら、詫びながら背を摩るところだが、今はただ濁った瞳で見つめているだけだ。
「…はあ…、隊長…。酷いじゃないですか」
七緒は涙目になって睨みつける。