◇BLEACH

□おめでとう
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 重箱が空になった所で、やちるが小箱を取出し、蓋を開けて何かを取り出す。
「剣ちゃん、あーん」
 小さな指で摘んだものを、剣八に差出し口を開けるように促す。
「何だ?これ」
「いいからっ、あーんして」
「あー…」
 やちるの緊張した面持ちに首を傾げながら、口を開けると、舌の上に乗せられる。
「……栗か?」
「おいしい?」
「…ああ、うまいぜ?」
「あはっ」
 やちるが満面の笑顔になる。
「…やちるが作ったのか?」
「うんっ!卯ノ花さんに教えてもらったのっ!栗きんとんって言うんだって」
「ふーん」
 差出された小箱から、一つ摘み、しげしげと見る。栗を潰して、砂糖を交ぜ栗の形に作り直しただけのシンプルなものだ。
 こんなものを作るまでになったのかと、やちるを見る。
「…ありがとよ」
「!どーいたしましてっ!未だあるからたくさん食べてねっ!」
 栗菓子を摘みながら、酒を口に運び、舞散る紅い葉を眺める。
「やちる」
「何?剣ちゃん」
「今回考えたのは、伊勢か」
「うんっ!七っ…って、ああっ!ばれちゃった…」
「…ふっ、はははははっ、まあ、伊勢を選んだ辺りは成長したか。松本と雛森には二度と頼むなよ?」
 剣八は大笑し、やちるの頭を撫でる。
「乱ちゃんと桃ちゃんはダメ?」
「あいつ等が考えるのは、ろくでもねぇ」
 過去に数度、やちるは乱菊と桃に相談しているが、乱菊は、剣八の誕生日祝いと解っていながら、やちる好みの子供じみたものをしたてて来るし、桃は惣右介や冬獅郎なら付き合えそうな、少女好みのものを考えるのだ。
 それからすると、七緒の考えるものは、やや春水の趣味が入っているが、落ち着いたものでいい。
「じゃ、これから七っちと考える」
「そうしてくれ」
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