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□あたためて
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外は炎天下
だけど中は氷点下
外に出れないとして
寒い時は
どうしようか
『あたためて』
目の前でアイスを頬張る植木を、ロベルトは呆れ半分で眺める。
本日8月16日。
室外気温36度の猛暑。
蝉もここぞとばかりに鳴き叫んでいて、窓を閉めていてもその声ははっきり聞こえた。
視線に気付き、植木は少し動作を止めると、食べかけのアイスとロベルトを交互に見る。
「……お前も食べればいいのに。」
「勘弁。これ以上、体冷やしてどうするの。」
体は冷房のお蔭で、アイスなんぞに頼らなくても、部屋もろとも十分に冷えていた。
冷房の冷気の如く、冷たいロベルトの態度に、植木は小言を言うと、再び口を動かし始める。
ロベルトは食べるよか、植木の行動を見ている方がよほど良かった。
「……君って、無駄に元気だよね。」
「なんだよソレ。」
「別に。」
「? お前は元気じゃないのか?」
植木はロベルトの発言に神妙な面持ちで、その首に手を伸ばす。
「……熱はないぞ。」
真剣に心配する植木にロベルトは、内心で密かに微笑んだ。
そして、首に触れる暖かな手の上に、自分の手を沿える。
「あったかい。」
植木はロベルトから向けられる視線にハッとすると、慌てて重なった手を振りほどいて隠した。