文集1

□夢幻
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その光景が、剰りにも彼に似合い過ぎていて怖かったんだ。
まるでマボロシを体現したような(否、違う。キミョウの方が当てはまる)
どこか自分の知らない所まで飛んでいってしまうような(元より俺は、彼についてあまり良く知らない)
ここではない、どこかへ行ってしまったような、掴んでいたモノを手放してしまったような(俺の手に、彼を掴んだような感触はなかった。一度たりとも)
それから凄まじい寒気に襲われて、全身が粟立った。
ぞくり、とした。自分の目の前に、世にも奇妙な光景が広がっていた。否。ソレは自分達の世界には、ごく当たり前の光景だった。
只、ソコに立つ人物が、俺にその様な幻を見せているのだ。そう思った。
そうとしか、思えなかった。


『ある店の常連客の暗殺』

ソレが今回自分達に下された任務だった。
今思えば、何故自分がその任務を言い渡されたのかが分からない。もっと適任が居ただろうに、こんな人も極少数しか殺した事も無い若造を指名するなんて。それも五代目から直々に。(これじゃあ断りようが無いじゃないか)
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