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□雲雀誕生日小話
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何故か嫌な予感はしていたのだ。
何故だかは、考えたくない。

今日は学校が休みだから、家で積み上げていた未読の本を消化しようと決めていた。
開けていた窓からひらりと入り込んだ遅咲きの八重桜に、ひやりと背筋に悪寒が走った。桜の季節にはいくらなんでも遅すぎる。
くるりと窓に向き直ると、不法侵入者は窓枠に足をかけ、今まさに入り込もうとしているところだった。
問答無用でトンファーを振りかぶると、相手はなんでもなさそうに槍の柄で受け止める。
「情熱的な歓迎、痛み入ります」
「帰れ」
「まぁそう言わずに」
「靴を脱げ」
「おや、それは失礼しました」
自分は何を言っているのだろう。
思わず溜め息を吐き出し、再び読書に戻る。
「恭弥。今日僕が来た理由とか、聞かないんですか?」
「どうせ戦いに来てくれたわけじゃないんでしょ。じゃあ聞きたくない」
「クフフ、相変わらずつれませんね」
「せっかく生身の君に会えたのに、戦えないんじゃ意味がない」
「おやおや、愛されてますね 僕」
「馬鹿じゃないの。殺してやるから死んでくれるかな」
「君の誕生日が僕の命日だなんて、一生忘れられない思い出になりそうですね」
その発言に、ぴくりと苛立ちを覚
える。本を閉じて、その生意気な首元にトンファーを押し付ける。
「君を殺した日がいつだろうと、そんな幸せな日をどうして僕が忘れられると思うの」
ぽかん と間抜けな顔で固まった後、骸は嬉しそうに声をあげて笑い出した。
「本当に、君の情熱的な告白には毎度毎度恐れ入ります。これでは僕に勝ち目はありませんね」
腹が立ったので押し付けたトンファーに力を込める。
「照れ隠しで殺されてはたまりませんから、離して頂けると嬉しいのですが…」
トンファーをしまってやると、骸は息を吐いて此方を見る。
「改めて。おめでとうございます、恭弥」
「贈答品は現金しか認めないよ」
「そうつれない事を言わないで下さいよ。この戦いが終わったら、君とキチンと決着をつけてあげますから」
なんだかその台詞が、世に言う所謂“死亡フラグ”というやつに聞こえて、おかしくて笑ってしまった。
「全く、やっと笑顔を見せてくれたと思ったら…君は本当に戦闘狂ですね…」
骸には誤解されたようだったが、敢えて訂正する必要も無いだろうと思い放っておく事にした。




end


12/05/05
 

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