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□あめのひ
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今日の天気は晴れのち雨
このところやけに晴れていると思えば突然とてつもない量の雨の降る日が続いていて、例に漏れずたった今しがたにバケツを返したような雨が降りだしたところだった。
最近の天気を鑑みるに傘は必携だろうと鞄に入れていた折り畳み式の傘の下、溜まって行く一方の洗濯物に思いを馳せた。
この天候でも容赦なく体育の授業は行われるし、同居人は日々馬鹿のように大粒の汗を流しながら帰って来る。こんな天気でもお構い無しに運動は続けるらしい。
自分も早朝にランニングはするが、進んで運動をするほど好きではない。出来れば体育の授業などは中止にしてほしいくらいだ。あれほど無意味な授業も無いだろう。
雨足の強い雲が早い風に流されてゆく。どんよりとした雲の切れ間からは光がさしていて、ちぐはぐな天気に笑ってしまった。まるで同居人のようだと考えてから、少し歩いて首を振って否定した。彼は一瞬の通り雨よりももっと厄介な、真夏の容赦ない太陽光の方がよく似合う。

部屋の鍵をあけて中へはいると、若干の湿っぽい臭いが鼻をついた。思わず溜め息が漏れて、除湿器を買おうと心に決めた。
濡れた靴下を脱いで洗濯籠に放り込んで、制服をハンガーに掛けて一息ついたところでふいに今朝の会話を思い出した。
「今日も降るらしいですから、傘を持っていきなさい」
「ええーっ、俺傘なんて持ってないし。トキヤ入れてよ!」
「嫌ですよ。傘くらいサオトメートでも売っていますから自分で買ってください」
着替えを済ませてから何となく心配になって、風呂がまに湯を張りバスタオルを玄関口に用意してしまった。私は一体何をしているのだろうと思った時には既に遅く、
「ただいまトキヤぁー!予報通りに思いきり降られちゃったよー、びしょ濡れ…ってトキヤ、どしたの?もしかして俺のためにわざわざ用意してくれたの?わああありがとー!トキヤだいすき!」
という声と共にびしょ濡れのシャツに抱き締められていたのである。盛大な溜め息と大量の説教という雨を降らせてやったのは言うまでもない。
せっかく着替えたのに余計な洗濯物を増やされた挙げ句風呂に連行された私は当然のように音也のなすがままに流されて、まるで先程頭上にあった雲のようだと自分でも情けない気持ちになった。そうされてしまうことが存外嫌でもないという事実にも頭がいたくなる。
思わず先程よりも大きな溜め息を吐き出すと、灼熱の太陽のような瞳がきらきらと此方を見つめていた。
理由を説明するのもくすぐったくて何となく誤魔化す為に頬に口付けると、思いきり抱き締められて押し倒された。
「だいすきだよ、トキヤ!」
「ええ、知っていますよ」

何故なら私は、あなたの何倍もあなたの事が好きですから。


end

12/09/18

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