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□委員長誕生日
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別に期待なんかしていないよ
この僕に限ってする訳が無いだろう
今日が学校が休みなのが悪いんだ。
ひとりで部屋にいると、本当に余計な事を無意識に考えてしまうから。
結局そのままあたりはすっかり暗くなり、ちっとも読み進まなかった本に栞を挟んで本棚に戻した。
連休は嫌いだ。僕は学校に居る事が何よりも好きだから。
別に学校に居ればあいつが来るだとか、そういう事を言っているんじゃないよ。
ちらりと携帯電話に目を遣る。
携帯電話のデジタル時計は23時を表示していた。
メールも着信も無い。
さわりと部屋の風が動いて、特別冷たかった今日の風を背中が捉える。
一瞬身体がふるりと震えて、直後に僕の肩に僕より少し低い体温が触れた。
耳障りの良い、ひくい声音。
「すみません、少し遅くなってしまいました」
喉の奥がギュッと苦しくなって、息が詰まる。
僕の言葉が少し遅れた事に、君が気付かなければ良い。
「遅いよ、君。何時だと思ってるの。本当に常識外れだよ」
「僕を待っていて下さったのでしょう?」
「そんなわけないでしょ。僕は君の声なんて聴きたくなかったよ」
「クフフ…そういう事にしておきましょうか」
一瞬前までの苛立ちが、うそのように霧散してゆく。
そんな事実に、僕は面白くない気分に浸る。
読み進まなかった本も、例年よりも肌寒い一日も、君のいない時間も、学校に居られない苛立ちも、ゆらりと侵入して来た新たな匂いにかき消された。
僕は君に気付かれないように、
形だけで言葉を紡いだ。
「Tanti auguri Kyoya」
(ありがとう)
end