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□10年前の忘れ物
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あれ、もうそんな時期だったっけ。
今までが必死過ぎて、そんな事も忘れてた。
この間並盛の地下に(雲雀さんに睨まれながら)基地の建造を始めたと思ったら、指輪の必要性が高まって、匣が見つかって、ミルフィオーレファミリーが暴れ出して…って、あれよあれよという間に始まってしまった。俺の命のカウントダウンが。
すっかり忘れてたなあー、なんて惚けてみても、やっぱり俺の意思なんて無視されて、どんどん進んで行くんだ。
ごめんね、俺はたくさんの人を守れない事がもう決まっているんだ。
ボンゴレの本部のたくさんのひとたち、山本のお父さん、アルコバレーノのみんな…リボーン。みんな、ごめんね 俺…みんなを守れない。…それは、あった事だから。
リボーンに言ったら、鼻で笑われたけどね。
でも、ごめん。それでも俺、それまでは精一杯頑張るつもりで居るから。…だから、そんな悲しそうな顔をしないでよ。


『ミルフィオーレファミリーから、幹部同士での話し合いの場を設けようとの連絡がありました』
伝えてくれたその人も、訝しんでいる顔をしていた。山本でさえも罠だろうと言った。…結果を知っている獄寺くんは、代わりに出るとさえも言ってくれた。
でも俺は、「あった事だから」と言って両方の申し出を断った。きっと、あの時から見た未来の俺も、わかっていても行っただろうから。
「お願いですから、どうかみすみすお命をご自分から手放す様な真似はなさらないで下さい…」
「ふふ 有難う、獄寺くん。でも大丈夫だよ、俺が必要になったらランボに頼んで貰えば」
「俺は…俺には、今のあなたが必要なんです!」
傍目にも必死が過ぎる程にせつない視線が強すぎて、俺は少し目を逸らした。
そんな風に言わないでよ、せっかく覚悟が出来ていたのに、こわくなって来ちゃったじゃないか。俺、元々びびりなんだから。
ギュッと抱き締められたからだ。否応無しに、目からは涙が零れて来る。
…ああもう、さいごまでかっこわるいなあ 俺。
「……10代目」
あの時は凄く大人びて見えた筈だった獄寺くんが、今は何でかとても幼く見えた。結構可愛いところもあるんだよね。

全部、全部未練だなあ。何度も死ぬ気弾で撃たれて、沢山沢山後悔して蘇って。たくさん、凄く間抜けな理由で復活したなあ。…もう、復活はしないのかな。銃で撃たれる予定らしいんだけどなあ。
「……ほんと、死んでも死にきれないよ」
わかっててもどうにもならない事程、こわい事も無いと思う。…先にわかってる事なんて、あまりにも少ないけどね。
「もっと、言えば良かったかなあ…俺、恥ずかしくてあんまり言えなかったからさ」
「……?」
「獄寺くんに、すきだよって」
「…っ、じゅう、だいめ……!」
だからさあ、そんな悲しそうな顔をしないでよ。
すきな人には、そんな顔をして欲しくないな。
「笑っていてよ。笑って、送り出して。…君は、俺の嵐の守護者なんだから」
無理矢理にでも笑ってくれる、優しい獄寺くんが俺はすきだよ。
すべてのものが未練なんだ。もしも復活出来たなら、その時はみんなみんな、守ってみせるから。…もしもなんて、あるかわからないけど。
だから、その時まで、待っていてね。




end
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