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□君の為なら
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雲雀はいっそ、どこか別の所へ行って仕舞おうと思った。
どうせ見掛ける事さえも出来やしないのなら、この街に居ても想いが募るだけだったから。彼の為になら愛するこの街を棄てる覚悟でさえもあるというのに、何故彼は自分の前に現れてくれはしないのだろうか。

もう駄目だ。


と、感じた。



「お久し振りです、ヒバリキョウヤ」


彼は突然現れた。
それも、あの時と何ら変わり無い姿で、まるであの時から時間等経っていないかの様であった。
それでもこの胸は息苦しさを感じる程に苦しくて、狂おしい程に彼…六道骸を欲している事がわかって痛かった。
雲雀の想い等露知らず、骸は雲雀に微笑い掛けた。
「何しにきた…?」
雲雀は自分の溢れ然うな想いを抑えて、骸に気付かれない様に低い声で鋭く言い放った。
「クフフ…怖いですね。久し振りの再会だというのに」
骸はわざとらしく残念そうな声で云うと、徐に雲雀に近付いた。
「嫌いになっちゃいましたか?僕があんまり待たせたから」
「―――…っ!!元より君を好きだなんて一言も云ったつもり無い!!」
雲雀がムキになって然う叫ぶと、骸はやはり、相変わらず微笑んでいるだけだった。
そのままの表情で骸が雲雀を抱き締めると、雲雀は膝からくずおれそうになった。
「何なの…君……何がしたいの!?」
もう逢えないと思っていた。それでも今日まで待っていたのは、どこかで逢えると期待していたからだ。あまりにも呆気無く此処まで来て仕舞うと、今度は失う事を考えて仕舞い恐怖感を覚えた。また今までに逆戻りして仕舞う事は、今まで以上の苦痛を伴う事だった。

「僕の居なかった間、寂しい思いをさせて仕舞いましたね」

骸が優しく然う云うと、雲雀の眼からは涙が零れた。
それきり文句も何も言いたくても言えなくなって仕舞った雲雀は、骸を叩く事で文句に代えた。
骸は暫くの間、珍しくその儘で雲雀の頭を撫でているだけだった。





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