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□その笑顔とその涙
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それは、久々に見た夢であった。

只俺は笑って、笑った自分に嫌気が差した。


そう、只其れだけ。


別に何があった訳でも無い。其処に在った何かが失く成っただけ。

其れは俺にとって何でも無かったし、驚く様な事でも無かった。

だから、何故自分が笑ったのか。其れだけが気に食わなかったのだ。




「………」

何だ、未だ夜じゃねぇか。

見覚えのある天井に、見覚えのある風景。只違ったのは部屋の窓が開いていた事だけ。窓から心地良い風が入ってきて、白いカーテンを揺らして日の光が差していた。
XANXUSには其れが少し気に食わなかったが、起きるのも億劫でそのまま横になって仕舞った。
客人があったのにも気付いていたが、其の客人も無視を決め込んだ。




「おーい、邪魔するぜ」
客人は突然外から3階の窓へ顔を出すと、ひょこっと窓枠へ登ってみせた。
「うわっと、とと」
着地に失敗はしたものの何とか部屋までやってくると、部屋の主の就寝中にも関わらずベッドへと腰を降ろした。
「………………うぜえ重てえ退けカス」
ややあってからXANXUSが文句を云うと、客人はにっこりと微笑った。
「お、よーやく反応あったな」
ディーノはヘラヘラとおどけて云うと、XANXUSを覗き込んだ。
「………何しに来やがった…カス…俺の眠り邪魔しに来ただけならてめえブチ壊すぞ」
「何云ってんだよ。昔っから云うけどオレには何もして来ねーじゃねーか、XANXUS」
XANXUSが凄んでもちっともひるまずに、ディーノはニコニコと続けた。
「まーまー、今日は用があって来たんだ」
急に真面目な表情に成ったディーノに、XANXUSはほんの少しだけ動きを止めた。
「………隠してるつもりか?その程度で」
「あぁ?巫山戯た事云ってんじゃねぇよ。俺が何隠してるっつーんだよ。ンな事云う為にわざわざ来たんなら帰れよカスが」
「ああ、わざわざ来るさ。お前の事が好きで、凄く心配だったから」
「てめえに心配される様な事はまるで無えよボンクラ。何どさくさに紛れて巫山戯た事云ってやがる。消えろ」
ディーノの一言に、更にXANXUSは怒りを増したが、ディーノは其れでも話を続けた。
「………オレは、全部知ってるぞ」

アイツの気持ちも、お前の気持ちも。

ディーノが然う云うと、XANXUSはピタリと抵抗を止めた。
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