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□黄金の月
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君がぼくの目の前から消えて、随分と時が流れた様に思う。

あの時はあれだけぼくにしては珍しく感情が露わだったというのに、今のぼくのこころは流した涙よりも冷たく成ってしまっていた。

あまりに長い事この温度の中に浸かっていたから、ぼくはあの温度を忘れてしまったのかもしれない。

君の事を何とも思っていないって、ぼくは表情を変えずに云えてしまう。

本当は、あの温度を思い出したくて堪らないのに。

君に大切な事を伝えるつもりだったのに…



今、目の前に君が現れて。

ぼくはあの時と同じ様に君に大切な事を伝えようとくちを開いたけれど。

ぼくはやっぱり恥ずかしくって、大切な事なのに君に言い出せなかった。

ぼくはやっと、あの温度を思い出せたのに。大切な事も伝えようって思えたのに。

ぼくはやっぱり臆病で、君になにも言えなかった。



あの長い様で短かった君の居ない日々の中で

気が付いたらぼくの背中にはやみがこびり付いてしまっていた。


ああ、こいつが冷たくしてたのか。


それが妙に納得できて、ぼくは君の前だというのにつめたい涙を流してしまった。

(背中に背負ったやみの中でも、ぼくは手探りで何でもできると思い込んでいた)



ぼくは君に、大切な事を伝えた。

ぼくの中にある、ぼくの感情を。

君はゆっくりと静かに微笑んで

「是非」


と云った。

ぼくはやっぱりまだ涙を流していた。



ぼくの願いと君のウソを合わせて

6月の夜ぼくらは永遠を誓うキスをした。



ぼくの未来に光などなくても

誰かがぼくのことをどこかでわらっていても

君のあしたがみにくくゆがんでも

ぼくらが二度と純粋を手に入れられなくても

夜空に光る黄金の月などなくても


永遠を手に入れたぼくは、その約束にしがみついて離れない事にした。

例え君の吐いたウソだったとしても、あの温度だけはウソではなかったから…



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