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□灰被りと王子様
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僕はもう、自由ではなくなってしまいましたから。

僕はもう、力を使い果たしてしまいましたから。

…なんて、君にはただの言い訳にしか聞こえないのでしょうね。



「…骸様。この家で良いんですか?」
立派な日本家屋の前で、小さな少女が独り言を呟いた。
「…わかりました」
少女は再び呟くと、軽い身のこなしでその家の屋根まで跳んだ。そしてひとつの窓の前まで行くと、戸惑いがちに窓を軽くノックした。
「…………」
部屋の中からは確かに人の気配はしたが、返事は無かった。
気付いていないのかわざと気付いていない振りをしているのかわからないが、少女は再び窓をノックした。
「…………誰?」
小さく微かにではあったが、確かに人の声が返ってきた。
「……誰なの?」
少女の姿はやがて、男の姿へと変わっていった。
「僕ですよ」
「………っ!」
勢い良く窓が開け放たれて、家主が顔を出した。
「〜〜〜……ほ…本当に…君なの…?骸…?」
「僕以外に、誰が居ると言うんですか?」
屋根の上の男…骸がにこりと微笑うと、家主である雲雀はキッと睨み付けた。
「……そんな顔をさせたくて、わざわざここまで来た訳では無いのですけどね…」
「君は…僕にこんな顔をさせるだけの事をした」
雲雀が少し苦しそうな表情で言うと、骸は悲しげな表情をして徐に雲雀に近付いた。
「雲雀くん…僕はただ、君にお会いしたかっただけなんです…そんな顔をさせてしまって本当にすみません…」
骸が雲雀を抱き締めると、骸の肩に何か冷たいものがこぼれ落ちて来たのがわかった。
「………ばか…殴ってやろうと思ったのに…これじゃあ君を殴れないよ……」
「おや。では、殴られなくて良かったです」
せっかくの再開なんですからね。
雲雀の背をあやす様に撫で乍ら、骸は優しい声色で囁く様に云った。


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