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□灰被りと王子様
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「…ねぇ…骸…」
「何ですか?」
雲雀の部屋のベッドの淵に腰掛け乍ら、骸は雲雀を抱き締めていた。
「………キスは…してくれないの…?」
雲雀が頬を紅くして小さな声で訊ねると、骸は嬉しそうに微笑い乍ら頭を撫でた。
「残念乍ら、其れをすると魔法が解けてしまうんですよ。せっかく可愛い事を言って下さったのにすみません」
「…………そう」
幾らか呆れた様な、寂しそうな顔で雲雀が俯くと、骸は雲雀を抱き締める腕に力を込めた。
「それでも、僕が君を愛しているという事実は何時までも変わりませんよ」
骸がにっこりと微笑うと、雲雀は気恥ずかしそうに骸の胸に顔を埋めた。



『すみません、そろそろ戻らなくてはいけません。クフフ…なんだか僕は灰被りの様ですね』
尤も、僕は王子の方ですがね。

そんな事を宣い乍ら、彼が此処を出て行ったのはつい先程。
自分は何時までもその場から動けずに、只彼の触れた自分の躰を抱き締めていた。
もしかしたら、自分の作り出してしまった幻影だったのかも知れなかったけれど、幻影にしては随分と自分勝手な幻影だったと思った。

「……早く会いたいよ…骸…」

時計の針や、鐘の音なんかどうでもいい。格好が見窄らしいからって見捨てる様な男じゃないのを知っているから。


「早く出ておいでよ…僕の“王子様”」


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