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□雪の骸雲 宝野さまへ!
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さくらみたいだと言った。

食べたらあまい香りが広がりそうだと言った。

だから僕は 雪が好きになった。



例えばを食べてしまいたいとか
そんな最高のロマンチシズム




その日の朝 窓が曇って外が見えなかった。
何故だろうと思って窓を開けると、そこには雪が降り積もっていた。
寒いのが嫌いなので直ぐに閉めてしまうと、起き上がって支度を始めた。


支度を終えて外に出ると、そこは一面の雪景色だった。
自分の歩いた跡がくっきりと白い雪に残って、それが楽しくて雪の上を何度も往復した。
それから学校へと向かう途中で、丁度会いたいと思っていた人物に出くわした。


「おはようございます 雲雀君」
にこりと微笑って骸が云うと、雲雀はほんの少し不満そうな表情をした。
「なんでここにいるの」
君 学校隣町でしょと雲雀が言うと、骸は楽しそうに笑った。
「僕も 君に会いたいと思っていた所なんですよ」
奇遇ですねえ。
雲雀は頬を染めて俯くと、蚊の鳴く様な小さな声で 何で分かった と呟いた。
骸はそんな雲雀を抱き締めて、大好きですよと言って笑った。


「美味しそうだと思いませんか」
何がだと雲雀が問うと、骸は比較的綺麗な雪を掴み雲雀に見せた。
「堕ちる姿がさくらに似ていませんか 食べたらあまい香りが広がりそうです」
にこりと微笑んでから、骸はその手の雪を塀へ投げつけた。
「いっそのこと、かき氷みたいに食べたら良いよ そしたら君の言うように、あまい雪の完成だ」
骸は少し考えて、それから首を横に振った。
「やはり、雪もさくらも見ている方がいいです」
味を知ってしまったら、離れられなくなりそうですから。
ずっと立ち尽くしているだけだった2人の肩に雪が積もっていた。
雲雀がそうだと手を打つと、骸に向き直った。
「応接室に雪兎のお菓子があるんだ」
食べる?
雲雀が手を差し出すと、骸は是非と手を握り返した。




雪は寒くて嫌いだったけど、これからは雪が好きになれそうだった。


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