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□僕は君が好きみたい
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次の日、やっぱり骸は来なかった。
そろそろ来る時間だと無意識の内に感じると、何時足音がするかとつい聞き耳を立ててしまったけれど。
昨日のやり取りを思い出して、そう言えば来ないと宣言していた事を思い出した。
そうしてから、自分は骸を拒絶した筈だったのに来て欲しかったのだろうかと考えてびっくりした(まさか有り得ないと思ったから、其処で思考は中断した)。


そんな日が何日も続いて、僕は少しおかしくなってしまった様だった。
いつも仕事に集中が出来なくて、群をみても咬み殺すまでに時間が掛かってしまう。
今までこんな事は無かったのに(あいつが近くに居る時以外は)。

そんな事だから(僕が腑抜けた儘だったから)少し厄介な事になってしまった。

数日前に、集中出来ずにただ流してしまっただけの書類の中に、そう言えばそんな名前があったかもしれない。
今更うろ覚えの書類の内容を思い出して後悔した。
なんでもっと早く咬み殺しておかなかったのだろう。
目の前でニヤリと下品な笑みを浮かべる男達を眺めて、この程度なら軽く勝てると思っていた。
トンファーを構えて睨み付けると、相手も武器を構えてかかって来た。
数人を倒した所で、やっぱり集中が出来ていなかった。
普段なら避けられる筈の攻撃に、思い切り当たってしまった。呼吸が止まりそうになって、苦しくて少し態勢を崩した。
そこをチャンスと見たのか背後から蹴り飛ばされて倒れ込んでしまった。
「か…ハッ!」
息が詰まって咳き込んでいる間にも数人から蹴られて、意識が遠くなりかけていた。
そんな時に、背後から刃物の気配を感じた。
サッと背筋を寒気が伝って、こんな時に限って身体は上手く動かなかった。
(助け…て…骸…っ!!)
何故だか、骸の名前が吐いて出て。
びっくりしたのはその後だった。
「僕の雲雀くんに手を上げるとは…身の程知らずも甚だしいですね。死の覚悟はおありですか?」
パキン、と 刃先の折れる音がして、静かに骸がやって来た。
「む…くろ…」
僕は少し呼吸が苦しくて咳き込み乍ら名前を呼ぶと、骸は笑って振り返った。
「雲雀くん、大丈夫ですか?」
もう傷付けさせませんから。
骸が相手に向き直ると、一瞬後には辺りには誰もいなかった。
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