2

□蝶とワルツを
1ページ/3ページ

君が“雲”と称されてから、どれほどの時が経ったでしょう。
此方の空気にも馴染んで来た頃、優雅なパーティーへ深紅の差し入れのあった時。君は本気で嫌がっていましたね。
一番連携の取れる組だから 女性を危険な場所へは送れないから
ボンゴレの若き10代目の判断で、僕等はボールルームへと赴く事になりました。
勿論舞踏室ですから、只の壁の花では許されません。
女性に扮した不機嫌丸出しな美しい君を壁から摘み取って、僕はワルツに合わせて踊りました。
君のダンスは壊滅的ではありましたけれど、豪奢なホールが血塗れる前に、とても良い思い出が出来ました。

騒々しい空気を割って、主催者が挨拶の為に顔を出しました。
このボールルームを自慢したいが為に呼んだ人間達に、成金男は笑顔で来場者を労った。
美しい君は声を出しては男であることがわかってしまうので終始口を噤んでいましたが、彼が出て来た時は思わず本音が零れたようでした。
「あれじゃあ殺されても仕方無いよね。世渡り下手そう」
…君も他人の事は言えませんよとはとてもじゃないですが言えませんでした。
「さて、お仕事を始めましょうか」
君はまた押し黙ると、挨拶を終えて階下に降りて来た主催者の傍へ近付きました。
僕はつくづく君に暗殺だとか暗躍だとかは似合わないと思います。君は“闘う”事が好きなのでしょうから。
美しい君がにこりと微笑うと、彼は君に気付いて下心を隠そうともせずに近付いて行きました。
…まあ、僕がただで君に他人を近付ける訳が無いのですが。
花のような君を守る為に、僕は彼の背後から彼の急所を刺しました。
他人に気付かれてはいけないので、僕はホール全体に幻覚を掛けました。
僕は花を抱き上げると、そのまま何もなかったように立ち去りました。

依頼は難なくこなせましたし、君の可愛い姿は見られましたし(物凄く不満顔ではありましたが)僕はとても満足しました。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ